タイトルなし
青い花々は、どこまでも続いていた。 風に揺れる無数の花の隙間から見えたのは、 テラスの椅子に腰かける彼女の姿だった。 その赤いドレスだけが、 青に染まる景色の中でひどく鮮やかで、 まるで最初から、 そこだけが物語の中心だったみたいに思えた。 賑やかな時間がひと段落して、 皆がそれぞれの午後を過ごし始めたころ。 彼女は一人、花の香りを運ぶ風に髪を揺らしながら、 静かに花畑を眺めていた。 近づこうとして、足を止める。 声をかければ、いつも通り振り向いてくれるはずなのに、この瞬間だけは、壊してしまうのが惜しかった。